保 佐(民法11条、13条)

行為能力

制限行為能力者制度の条文です。
ここでは、後見人、保佐人、補助人などの制限行為能力者の定義、法律行為の効果について定めています。

しかし、後見人、保佐人、さらには補助人の違いについて、逆に記憶してしまったり、記憶が曖昧になってしまって、つい問題文のひっかけにつまづいてしまう人もすくなくありません。

かくいう私もそのひとりでした。

しかし、各々の条文の要件と効果、さらにはその意義をしっかりと理解すれば、決して難しい問題ではありません。
問題が難しく感じている人の原因は、つまるところ、要件・効果が曖昧になっているからだと思います。

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保佐に関する要件・効果

 
11条と13条を、それぞれ公式にして記載します。
11条で被保佐人を定義して、13条で被保佐人の法律行為についての効果を定めています。

11条;被保佐人の定義

 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者

 家庭裁判所の保佐開始の審判を受けた者

( = 被保佐人

例外
第七条(成年被後見人)に規定する原因がある者

13条

 被保佐人の法律行為であること

 保佐人の同意を得なければならない行為であること

 被保佐人の同意を得ないでした行為またはこれに代わる許可を得ないでしたもの

 = 取り消すことができる。

例外 9条ただし書きに規定する(日用品の購入その他日常生活に関する)行為

民法11条と13条の公式

 
要件効果を条文から導き出してみます。
蛍光ペンを引きながら、条文を素読してみましょう。

保佐人に関しては、まず11条で被保佐人について定義がなされています。

第11条(保佐開始の審判)
精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。

そして、被保佐人は、成年被後見人、と同時には審判がなされないという例外を定めています。
試験問題では、これらの制限行為能力者制度が重複して審判がなされるか否かを問う問題が、しばしば出題されれますので注意してください。

そして、13条で、11条で定義された被保佐人の法律行為について保佐人の同意を要する行為が定められています。

第13条(保佐人の同意を要する行為等)
被保佐人次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
(1~9号、2項、3項省略)
4 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる

9つの取り消すことができる行為は後回しにして、条文の定める大きな要件・効果を確認して、その意義から、なぜ9つの項目について取り消し可能なのか?と考えるのが理系脳の考え方です。

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意義

 
事理を弁識する能力が著しく不十分である者』をどのように保護すべきか、という観点で考えてみます。
成年被後見人とは、事理弁識能力を欠いている者でしたので、それと比較しながら意義を考えると良いと思います。

被保佐人の事理弁識能力の要件は、著しく不十分であることです。
ですから、民法では、13条1項各号に定めた重要な財産行為について、被保佐人が単独で法律行為をすることにより被保佐人の利益を害することの無いよう保護しよう、という趣旨です。
具体的には、保佐人の同意を得ないでした行為、またはこれに代わる許可を得ないでした行為は、取り消すことができると定めています。

成年被後見人との違いのひとつは、保佐人に同意権を与えていることです。
事理弁識能力が著しく不十分であっても、保佐人の同意のとおりに法律行為をすることは可能であろう、という趣旨です。

保佐人の同意を要する行為

 
先に述べたように、保佐人の同意を要する法律行為は、重要な財産行為です。
種々意見はあるかもしれませんが、法律では13条1項各号のように定めているのです。

そして、13条2項では、前項の定め以外の財産行為であっても、その保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができると定めています。
ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為は除かれます。
日用品の購入その他の日常生活に関する行為は、成年被後見人の法律行為であっても有効ですから、成年被後見人とのバランスを考えると理解できると思います。

13条1項各号のうち、ひっかけ問題や間違って理解しがちなものをピックアップして、その意義を示していきます。

1号 元本を領収し、または利用すること

 
元本を領収する行為とは、金銭債権の債務者が、債務を履行し、返済する行為と考えて良いと思います。
一見、借りたお金が帰ってくるのだから、単独の行為を認めても良さそうな気もします。

しかし民法の考えは、例えば返済期限前の元本の領収、いわゆる期日前の繰り上げ返済を受けると、利息を受取るという利益が減少することになるので、被保佐人の利益を害する可能性がある、という趣旨です。

4号 訴訟行為をすること

 
行政書士試験の範囲からは離れると思うのですが、年のためこの号で定める訴訟行為の範囲について記しておきます。

ここでいう訴訟行為とは、いわゆる能動的に訴える行為のことを意味しています。
例えば、訴えの提起、上訴などのことです。

反対に、相手方に訴えられた場合や上訴された場合の応訴は、保佐人の同意を必要としません(民訴法32条)。
また、訴えや上訴の取り下げ、和解、請求の放棄・認諾など、判決によらずに訴訟を終了させる場合は、特別の同意が必要になります(民訴法32条2項)。
(参考文献 民法総則)

5号 贈与、和解、または仲裁合意をすること

 
贈与を受ける行為は、元本を領収する行為とは異なり、利益を害することはないであろう、という趣旨です。
和解、仲裁合意をすることは、訴えの際の和解合意と同様に、重要な財産行為であろうと理解します。

7号 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること

 
5号の記載と対で考えると、民法では、贈与を受けるという行為は、贈受者が、一方的に利益を受けると判断していることが分かります。
ですから、贈与や遺贈の申し込みを拒絶するということは、一方的に利益を受ける行為を拒絶することによって、被保佐人の利益を害する可能性があると考えていることになります。

それが負担付遺贈である場合には、端的にいえば、それが損か得かの判断して承諾するか否かの行為は、重要な財産行為であるということです。

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保佐人の代理権について

 
保佐人の権限を学習していくときに、よく混同しがちな権限に、保佐人の代理権があります。

代理権は、11条に定める保佐開始の審判とは別に、876条の4に定められています。

876条の4(保佐人に代理権を付与する旨の審判)
家庭裁判所は第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる

代理権を付与する審判がなされると、保佐人は、13条1項各号に定める法律行為について、保佐人に代理して法律行為ができることになります。
実務上で考えると、代理権を付与された保佐人は、事実上、保佐人の知らないうちに法律行為ができることになり、包括的に代理権が与えられている成年後見人とほぼ同様の権利を得ることになります。

そこで、事理弁識能力を欠く成年被後見人と比べて、そこまでとは言わないものの事理弁識能力が著しく不十分である被保佐人に対して個人の意思を配慮する趣旨で、本人意外の者から代理権付与の審判の請求があった場合には、本人の同意が必要であることを要件としています。

876条の4(保佐人に代理権を付与する旨の審判)
2項 本人以外の者の請求によって前項の審判をするには、本人の同意がなければならない

ただし、実務上は保佐人の審判がなされる場合であっても、家庭裁判所では本人と面談しなければその審判がなされないことがほとんどのようです。

まとめ

 
制限行為能力者制度については、それぞれの要件をしっかりと把握して意義を理解すれば、解ける問題です。
要するに、要件効果を曖昧にしているから、問題文を見て悩んでしまうのです。

被保佐人の要件のひとつは、『事理弁識能力が著しく不十分な者』ということです。
事理弁識能力が著しく不十分な者の、重要な財産行為について、著しく不合理な判断により被保佐人の利益を害することの無いように保護しよう、という趣旨です。

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