無権代理人の責任(民法117条)

民法総則

民法99条の代理についての要件・効果を基本として、それ以降の条文で、その要件に瑕疵があった場合の効果について定めています。

>>代理(民法99条)についてはこちら

113条では、代理の要件のうち「代理人に有効な代理権があること」の要件を欠いた場合ついて、特に、代理人として行為をした者にまったく代理権が無かった場合について定めています。

>>無権代理(民法113条)についてはこちら

無権代理人の行為の効果は、本人が追認しない限り、本人や代理人には帰属しません。
このとき、契約の効果を期待した相手方は、損害を被る可能性が極めて高くなります。

そこで、民法では無権代理人の行為を信用した相手方の保護をするために、無権代理に対し重い法定責任を課しています。

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無権代理人の責任についての要件・効果

無権代理人の責任についての要件・効果は以下の通りです。

 無権代理人として代理行為をしたものであること

 代理権を証明できず、かつ、本人の追認が得られなかったこと

 無権代理人であることにつき、相手方が善意・無過失であること

 無権代理人が、行為能力を有していること

= 相手方の選択に従い、契約を履行する責任または損害賠償責任を負う

117条2項には例外規定があります。
しかし、この例外規定を反対解釈して、要件をシンプルにまとめています。

民法117条の公式

要件効果を条文から導き出みるとどうなるでしょうか。
蛍光ペンを引きながら、条文を素読してみます。

117条(無権代理人の責任)
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う

公式にします。

 無権代理人として代理行為をしたものであること

 代理権を証明できず、かつ、本人の追認が得られなかったこと

= 相手方の選択に従い、契約を履行する責任または損害賠償責任を負う

 
2項には例外規定があります。

117条(無権代理人の責任)
2項 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。

無権代理の場合の取消権の例外は、悪意のときのみで、無過失を求めていませんでした。
しかし、無権代理人の責任を追求するにあたっては、相手方の無過失を求めています。

取消権よりも、責任追及の方がより重い責任ですから、そのバランスを保つために相手方にも無過失を求めます。
>>無権代理の相手方取消権についてはこちら

公式にします。

 相手方が悪意または有過失のとき
 無権代理人に行為能力が無かったとき

 
例外の要件はシンプルですから、これを反対解釈して例外でなく要件にまとめてみます。

例外の反対解釈

 無権代理人であることにつき、相手方が善意・無過失であること

 無権代理人が、行為能力を有していること

こうすると、文頭に記載したような要件にまとめることができます。

要件

 無権代理人として代理行為をしたものであること

 代理権を証明できず、かつ、本人の追認が得られなかったこと

 無権代理人であることにつき、相手方が善意・無過失であること

 無権代理人が、行為能力を有していること

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115条による取消権を行使していたとき

 
取引の相手方が、すでに無権代理人との契約を、115条に基づき取り消していた場合、117条に基づく無権代理人の責任は追認できません。
少し解説します。

無権代理人の為した契約は、本人が追認しない間は、相手方は取消権を行使することができます。
>>無権代理の相手方取消権についてはこちら

取消権を行使した相手方は、無権代理人との法律関係も消滅します。
法律関係が消滅しているのですから、117条に基づく責任追求として、損害賠償請求もできません。
契約履行の請求はできないことはもちろんのことです。

無権代理人に対する責任の追求は、契約関係の存在が前提ということです。

ただし、既に取消権を行使していても、相手方が無権代理人より損害を受けていた場合には、不法行為による損害賠償請求(709条)ができる可能性は十分あります。

公式を使って問題を解く

過去問の出題例から、公式を使って問題を解いてみます。
公式が当てはまるか否かを確認すれば良いだけです。

問題 次の問題の正誤を答えよ


AとCの取引で、Aの代理人Bが、Cの代理人Dに代理権のないことを知らないことに過失があったとしても、Aは、Dに対して無権代理人の責任を追求することができる。
平成9年 司法書士試験

この問題は、代理権のないことを知らないことにつき有過失であった場合の効果を問う問題です。

無権代理人に対して責任を追求できるときの要件を理解していれば、簡単に解くことができるでしょう。

要件

 無権代理人として代理行為をしたものであること

 代理権を証明できず、かつ、本人の追認が得られなかったこと

 無権代理人であることにつき、相手方が善意・無過失であること

 無権代理人が、行為能力を有していること

要件に、相手方が善意・無過失であること、があります。
問いは、有過失であっても無権代理人の責任を追求できるか否か?を聞いていますから、無権代理人の責任を追求できる要件を満たしません。

正解 ✕

問題を少し応用して、同様のケースで取り消しができるかどうかを聞かれた場合はどうなるかを考えてみます。

問題
次の問題の正誤を答えよ
AとCの取引で、Aの代理人Bが、Cの代理人Dに代理権のないことを知らないことに過失があったとしても、Aは、Cとの取引を取り消すことができる。

平成9年 司法書士試験・改題

取消権を行使出来る要件の公式を当てはめてみます。
>>無権代理の相手方取消権についてはこちら

  代理権が無い者の代理行為の契約であること

  本人が未だ追認していないこと

= 契約を取り消す権利を有する
例外
・ 悪意:相手方が、契約の時に代理権を有しないことを知っていたとき

取消権が行使できる要件の例外は、相手方の悪意のみで、有過失は例外ではありません。
したがって、取消権は行使できることになります。

正解 ◯

このように、過去問を解くにあたって、公式さえ把握していれば、問題を解くことは難しいことではありません。
さらに、なぜ有過失でも取消権を行使できるのか、なぜ有過失の場合は無権代理人への責任追及まではできないのか、の意義を理解していれば、実務でも十分応用できると思います。

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意義・まとめ

117条は、無権代理人に対する法定責任についての条文です。
無権限者の行為ですから、本人に効果が及ばないことは当然ながら、その相手方を保護するにあたり、どのような保護規定があるかという観点でみることが重要です。

117条の効果の通り、無権代理人に対しては法で定めた通りの重い責任が課せられています。
そして、この要件を満たせば、無権代理人は無過失であっても責任を負うことが、判例で出ています(最判昭62.7.7)。

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