法定追認と取消権の消滅(民法125条、126条)

民法総則

122条から124条に定められた追認は、追認権者による意思表示をすることが要件にあります。
この意思表示について、法律の定めた行為をすることにより追認の意思表示をしたとみなす行為と、取消権を行使できなくなる期間が定められれています。

いずれの場合も、取消しできる意思表示は有効になります。

スポンサードサーチ

法定追認とは

法定追認の公式は、条文にズバリ出ているので、条文から素読します。

125条(法定追認)
前条の規定により追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。
1 全部又は一部の履行
2 履行の請求
3 更改
4 担保の供与
5 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
6 強制執行

以下、各号について解説します。

要するに、125条に列挙された行為をしたということは、取消し可能な行為を了知して、その取り引きを有効にする意思が認められるということです。

全部又は一部の履行

履行には2種類あります。
取消権者が、取り消すことのできる法律行為から生じた義務を履行する場合と、相手方の義務の履行を受領する場合の両方と解するのが通説・判例(大判昭和8年4月28日)です。


例えば、翌月1日に誕生日を迎える19歳の少年Aが、相手方Bから10万円を借りて、翌月から毎月1万円ずつ返す約束(金銭消費貸借契約)をしたとします。
19歳のうちであれば、自分もしくは法定代理人が契約を取り消す意思表示をすれば、この契約は契約当時に遡って無かったものとなります。


余談ですが、この少年Aが10万円を全てパチンコで使ってしまったとすると、理屈上は1円も返さなくてもいいことになります。
詳しくはこちら→現に利益を受けている限度とは


話しを戻します。


翌月になり、この成年となったAが、相手方Bに1万円を返した場合、前月に結んだ金銭消費貸借契約は、取り消すことが出来なくなります。
少年が成年となったことにより追認できる行為能力者となり、追認できる時以降に、金銭消費貸借契約に基づく債務を履行したからです。

履行の請求

前に記載した例で、お金を貸した相手方Bも、Aとまったく同じ誕生日の少年だったとします。
未成年であるBが、Aに対し、お金を貸した契約を取り消すと意思表示すれば、金銭消費貸借契約を取り消すことが可能です。


しかし、翌月となりBが成年となった後に、「約束どおり1万円返してほしい」と約定返済の履行を請求すると、この契約は法定追認されたことになります。
Aに対し、約定返済の債務履行を請求したからです。


このとき、Bから債務履行を請求されたAが、まだ債務を履行していないのであれば、Aから取消権を行使することは可能です。
履行の請求によって法定追認されるのは、取消権者がする場合に限る(大判明治39年5月17日)からです。

更改

更改とは、契約によって既存の債権または債務を消滅させると同時に、これに代わる新しい債権または債務を成立させること(民法513条1項)です。


先に記載した金銭消費貸借契約の例で、AとBが、金銭消費貸借契約を破棄して、代わりに3ヵ月後にAがBに対し、Aの持つ携帯電話を渡すことで一括返済することにした場合、互いに成年になった後に契約を更改したので、法定追認されたことになります。

担保の供与

同じく先に記載した例で、翌月になりAがBに対して、元金10万円返済の担保として携帯電話を差し出して質権を設定した場合、成年となったAが担保の供与をしたことにより、締結した金銭消費貸借契約は、法定追認されたことになります。


またこのとき、担保の提供を受けた成年Bも、同じく担保の供与を受けたことにより法定追認され、以降はBからも取消権は行使できなくなります。

取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡

先に記載した金銭消費貸借契約の例で、Bが、Aに対する10万円の債権を、Cに譲渡した場合、Bからは取消権を行使できなくなります。

強制執行

先に記載した金銭消費貸借契約の例で、Bが、Aに対して強制執行した場合、法定追認されたことになります。
Bの強制執行を、広義に請求したものと考えれば、理解は容易いと思います。

異議をとどめたとき

条文に、法定追認の例外規定として、異議をとどめたときを挙げています。


例えば、法定追認の行為のうち、債権者から強制執行を受けた場合があります。
このとき、強制執行を免れるために一度弁済や供託することがありますが、「この行為は追認ではない」ことを表示してする場合には、法定追認とはならないと規定しています。

取消権の消滅

取り消すことができる行為は、相手方や第三者の地位を不安定にします。
ですから、取消権の不行使を一定期間継続したとき、取消権を消滅させることにしています。


取消権の消滅も126条にズバリ要件が出ているので素読します。

126条(取消権の期間の制限)
取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。


追認することができるときから5年間、または取り消すことができる行為をしたときから20年にいずれか早い方の期間を経過すると、取消権が消滅するということです。


例えば、先の少年間での金銭消費貸借契約を例にとると、契約した翌月1日に双方が成年となりますから、そこから5年間経過すると、双方の取消権が消滅します。

もっとも、双方が成年となってから5年間、履行の請求も返済も為されないという前提になりますから、現実的ではありませんが。

タイトルとURLをコピーしました