公式化するメリット

意義・要件・効果を理解する

法律を理屈で理解するためには何を理解すればよいのでしょうか?

たしかに、丸暗記や語呂合わせで記憶していれば、試験の点数は稼げます。
しかし、丸暗記や語呂合わせでは理解できないことは、法律の趣旨です。

例えば、連帯債務の絶対効を記憶するための語呂合わせ『セーコーコウソウメン』を記憶して、試験の回答は正解を得られたとしても、その法律の趣旨『なぜそう定めているのか?』を理解することはできないですよね?

法を理解するということは、法の意義を理解するということです。
意義を理解するためには、「この条文は誰を保護しているのか?」「この条文が無かったら、どんな問題が想定されるのか?」という観点で理解することが必要です。

つまるところ、法律を学ぶには、意義・要件・効果をしっかりと理解すればよいのです。
せっかく試験勉強をしているのですから、単に点数稼ぎでなく、資格取得後も役立つような学習をしている方が良いと思います。

では、どのように学ぶと、意義・要件・効果が理解しやすくなるのでしょうか?

公式化すると覚えやすい

法律の条文を、次のような等式の構造にして考えます。

要件1✕要件2✕・・・✕要件N
=効果

それぞれの条文をこのように、言ってみれば因数分解ならぬ要件分解するのです。
民法95条で例をあげてみます。

第95条(錯誤)
(前半)意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。

これを要件分解すると、次のようになりますね。

意思表示があること(要件1)✕法律行為の要素に錯誤があること(要件2)
=無効とする(効果)

六法やノートのまとめ方としては、蛍光ペンを上手く使うと良いです。

例えば、次のように要件をピンク(暖色系)、効果をブルー(寒色系)、例外や但書きを黄色と分けるルールを定めておくと良いでしょう。

第95条(錯誤)(前半) 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。

こうすると、民法95条の公式(要件・効果)は以下の通りになります。

 意思表示があること

 法律行為の要素に錯誤があること

 = 無効とする

これをノートにまとめ、またはテキストや六法に直接書き込んで、要件・効果をチェックして行きましょう。

掛け算は、ひとつでも0(ゼロ)があると答えは0になります。
法律の効果も、要件をひとつでも満たさなければ効力が生じません。

法律系の試験問題は、法律の要件と効果、そして条文の要件の解釈があいまいな部分の重要な判例を理解しているかどうかが問われます。
ですから、要件・効果、重要な判例を公式として理解していれば、たいていの問題は解けるはずです。

例外を知る

条文には例外が記載されています。
民法95条ですと、条文の後半に次のように記載されています。

第95条(錯誤)(後半)ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

つまり、次のときが例外です。
例外 表意者に重大な過失があったとき

ですから、要件に該当する法律行為が、表意者に重大な過失があったか否かを確認すれば、条文の効果があるかどうかが判断できるのです。

公式にまとめて趣旨を理解する

公式にまとめると、次のようになります。

 意思表示があること

 法律行為の要素に錯誤があること

= 無効とする

例外 表意者に重大な過失があったとき

そして、この条文の意義を理解します。

民法の条文趣旨は、『当事者間のどちらを保護するのか?それはなぜか?』と考えればほぼあてはまります。
このときに、はじめて参考書等を利用します。

95条については、法律行為の要素に錯誤があって意思表示をしてしまった人、すなわち勘違いをした人は、保護してあげようという趣旨です。
ただし、表意者に重大な過失があったときは、保護するに値しない、ということを法で定めています。

公式をつかって問題を解く

公式を使って問題をどのように解くかを説明します。

問題 次の問題の正誤を答えよ


意思表示に要素の錯誤があった場合、表意者は取り消すことができる旨は、民法の条文に規定されている。
(平成25年 宅建士試験)

民法の条文に規定されているかどうかに惑わされる必要はありません。
錯誤についての公式、つまり要件・効果を知っていれば簡単に解けます。

錯誤の要件・効果は、次の通りでした。

 意思表示があること

 法律行為の要素に錯誤があること

= 無効とする

問題文を読むと、「意思表示の要素の錯誤があった場合」を聞いているので、要件は満たしています。
この錯誤の要件を満たすときは「無効とする」というのが効果です。

問題文は、錯誤があったときの効果は「取り消し」であるかどうか、を聞いています。
効果が違いますから、当然正解は✕です。

正解 ✕

なぜ判例を学ぶのか?

同じく95条を例にとってみます。
要件のうち、「法律行為の要素」とは、具体的に何を指すのでしょうか?
この「法律行為の要素」の解釈は、人によって異なる可能性があります。


ですから、判例は要件の解釈について、あいまいな部分を具体的に判断しています。
反対にいうと、判例が、どの条文のどの要件についての判断なのか、を理解すると良いでしょう。


95条の動機の錯誤の判例は、法律行為の要素の解釈についての判断です。


意思表示をするまでの内心の動きについて、『伝統的な見解によれば、意思表示はⅰ.動機に導かれて、ⅱ.一定の法律効果を欲する内心的効果意思が形成され、その内心的効果意思を表示しようとするⅲ.表示意思を媒介にして、ⅳ.表示行為が行われるという構造を持つと解されています。』(民法講義録p88より)

意思表示に至るまでの内心は、次のように内心が動きます。

①動機 ⇒ ②効果意思 ⇒ ③表示意思 ⇒ ④表示行為

このうち、『①の動機は効果意思の前提をなす理由に過ぎないため、意思表示の構成要素ではなく、②効果意思、③表示意思、④表示行為の3つが意思表示の構成要素であると解されています。』(民法講義録p88より)
しかし、当事者間それぞれ個別の契約については、動機も法律行為の要素になるのではないか、と主張する人がいることがあります。
このように、法律の条文では定めきれない抽象的であいまいな表現の解釈を判断するために、より具体的な例を、過去の判例によって判断します。
動機の錯誤については、いくつかの有名な判例があります。

意思表示をなすについての動機は表意者が当該意思表示の内容としてこれを相手方に表示した場合でない限り法律行為の要素とはならない。(最判昭和29年11月26日)

通常意思表示の縁由(動機)に属すべき事実であっても、表意者がこれを意思表示の内容に加える意思を明示又は黙示したときは、意思表示の内容を組成し、その錯誤は要素の錯誤となり得る。(大判大正3年12月15日)

動機の錯誤が黙示的に表示されているときでも、それが法律行為の内容になることを妨げない。(最判平成元年9月14日)

つまり、法律行為の動機については、相手方に表示していれば、それが黙示的であっても、法律行為の要素になり得る、という解釈が判例です。

判例知識を問う問題を解いてみます。

問題 次の問題の正誤を答えよ


Bは、甲土地は将来地価が高騰すると勝手に思い込んで売買契約を締結したところ、実際には高騰しなかった場合、動機の錯誤を理由に本件売買契約を取り消すことができる。
(平成23年 宅建士試験)

動機が錯誤の理由となり得るか否かを問う問題です。
判例では、「相手方に表示した場合でない限り法律行為の要素とはならない(最判昭和29年11月26日)」のですから、Bは勝手に思い込んで契約しており相手方に表示していませんから、法律行為の要素とならず、錯誤の要件を満たしません。
そもそも本問では、仮に要件を満たしていても、錯誤の要件を満たす場合の効果は、取り消しでなく無効ですから、2重に間違いがあるということになります。

正解 ✕

数式化して覚えるとさらにメリットが

このように、要件と効果を数式化して覚えると、特に行政書士試験を受けようとしている方は、記述式問題の特別な対策がほとんど不要になります。

なぜなら、行政書士試験の記述式問題は、要件効果を書かせる問題だからです。
私は試験当日、民法の記述式問題は、問題文を読んで要件・効果をメモ書きしておいて、一番最後に文章を考えました。
ただし、要件効果を交えて文章を考えるだけなので、ほとんど時間はかかりません。

このように、特に自分が理系脳と自負している人は、条文を数式化して覚えることを鉄板でおすすめいたします。

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公式で解く民法 理科系の宅建士試験対策
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